2015年8月29日土曜日

旅立ち 遠い崖1 アーネスト・サトウ日記抄 萩原延寿著

幕末の日本に憧れを感じて、はるばるやってきた19歳のサトウに不思議な親しみを感じる。

アーネスト・サトウはその著作「外交官の見た明治維新」で幕末の日本史に名前を残した。ちょっとしたきっかけで、彼がロンドンのミルヒルスクールの卒業生だと知った。(私がロンドンに住んでいた頃、ミルヒルスクールは日本人駐在員の子弟も結構学んでいて、親しみのある学校だ。)
彼は兄が持っていたローレンス・オリファントの著作『エルギン卿遣日使節録』を読んで日本に憧れていたとのこと。ロンドン大学のユニバーシティ・カレッジ在学中に英国外務省の日本語通訳生の募集を知り応募。試験に最年少で首席で合格。19歳で幕末の日本にやってきた。その後20年以上日本に住んだサトウは日本人女性との間に三人も子供がいたという。日本研究者としても有名で多くの業績も残しているとのことで、興味を感じて彼について検索しているうちに、この本にたどりついた。
著者の萩原延寿は、英国国立公文書館に所蔵されているサトウ関連の公文書や膨大な日記や家族・友人への手紙を読み解き、サトウが交流した人々の業績・足跡を辿っている。サトウは日本語を流暢に話しただけでなく、文語の書簡なども自由に読みこなす語学力を持っていたという。英国サイドから語られる幕末史は非常に興味深い。全14巻のこのシリーズだが、第一巻は面白くて、またたくまに読了。先程第二巻を注文。
(サトウという姓だが、この名前は日本とは関係がない。彼はロンドンで、スウェーデン人の父とイギリス人の母との間に生まれた。)


写真は若い頃のサトウ

2015年6月16日火曜日

People Who Eat Darkness: The True Story of a Young Woman Who Vanished from the Streets of Tokyo--and the Evil That Swallowed Her Up

「ルーシー・ブラックマンさん事件」に関して書かれた本。キンドル版を購入し 読了。
『黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』として日本語版も最近出版されたらしい。
あの事件の頃、私は米国に住んでいたが、もうあれから15年も経ったのだ。時が経つのは本当に速い。
そう言えば、昔、私の知り合いの外人にも、軽い感じで銀座とか六本木でホステスのバイトをしていた女性が何人もいた。海外なら普通レベルの容貌なのだけど、日本だと金髪なので、ものすごくモテるようだった。
著者のリチャード・ロイド・ペリーは、イギリス人のジャーナリスト。日本とイギリスで丹念に取材を重ね、犯人そして、被害者の生い立ちや背景を克明に調べあげている。そして、織原という名前に行く着くまでに幾つもの名前を持った男の出自と複雑な生い立ちだけでなく、一見普通の家庭の出身に見えた被害者にもドラマがあったことを知った。
意外だったのは、当時日本のテレビにも出て、行方不明の娘を安否を気遣い情報を求めていた父親の評判が芳しくないこと。たしかに、私は、アメリカで放送された日本のテレビのニュースで彼が話すのを観たとき、ちょっとした違和感を感じたのだが、それは彼の人格のそういった部分が投影されていたのが原因なのかもしれない。
この事件の数年後に、リンゼイ・アン・ホーカーさん事件が起き、また一人英国人の女性が殺害された。世界一安全なはずのこの国でこのような犯罪、それも女性に対する犯罪が、起きるの悲しいが、世界的に見れば、日本はまだまだ超安全な国であることは確か。
こういう事件が起きると、普通の市井の人間からは想像もできない生い立ちや生活をしている人がいることを知り、「事実は小説より奇なり」というのは真であるとことを再確認する。・・・(イギリスの詩人バイロンの『ドン・ジュアン』にある「Fact is stranger than fiction.」から来ている言葉というが、昔からそういうことなのだろう。)
"People Who Eat Darkness: The True Story of a Young Woman Who Vanished from the Streets of Tokyo--and the Evil That Swallowed Her Up "
by Richard Lloyd Parry
http://www.amazon.co.jp/dp/B007RMYAPA